立式二胡の優れた効用

 北京、天津の楽器街や音大の近くでは、「琴行」が何軒も軒を連ねている。なかでも二胡、高胡類の専門店の多さが目につく。

 中国人口は日本の10倍強、人口当たり二胡弾き密度も10倍はありそうな感じ!とすれば、さしずめ中国の二胡人口は日本の100倍と言ったところか?
 当然ながら二胡教材も豊富である。子供向け、成人向けに止まらず、中老年向けまであり、さすがは本場、層の厚さ感じさせる!

 北京の王府井書店で、タイトルに惹かれて「中老年二胡教程」なる本を購入。この教則本は老年大学実用教材シリーズの中の一つである。さて老年用とは如何なるしろもの?

 初級編、中級編とあるが、いずれも曲の選択や説明が中老年を意識したつくり!つまり中身の難易うんぬんよりも、中老年には中老年の興味や、教え方があることをうかがわせる。
その本の最後に「立式二胡の優れた効用」なる一文があった。これが中々新鮮でインパクトがある内容と思えるので、そのあらましを翻訳し、紹介することにしました。
 
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立式二胡の優れた効用」の抄訳
湖南文芸出版社「中老年二胡教程」
著者「岳峰」南京師範大学音楽学院教授/著名な二胡演奏家(女性)

 二胡演奏の動きは表面的には、弓を押したり引いたり、腕を曲げたり伸ばしたりと単純そうに見える。しかし実のところ良い二胡演奏者の見事な演奏は、全身の動きが調和し、気と力が相通じている状態なのである。
全身の動き、すなわち胴から肩へ、肩から腕へ、腕から指へといった一連の動きが互いに調和(連携)している。これは経験豊かな二胡演奏者が持っている共通認識なのです。

 諸々の演奏技巧における、動きと力加減を見たとき、
例えばビブラートは、指が弦を揉む際の支点となり、手の関節と指の関節だけを上下に動かすことのように思われがちである。実は良いビブラートのかけ方とは、肩を支えとし、左腕を通じ、手を中枢として指の腹まで伝えるという、全体を貫いた動きから得られる。

 またポジション移動でも、その動きは肩から腕へ、腕から指への一連の動きがあって
スムーズな移動が可能になる。また、もしポジション移動と右手の弓使いをうまく調和させ、イントネーションの効いた音(ポルタメント?)を出したいのなら、背中を伸びやかにし、両肩の間に力が通い合うようにする必要がある。

 また長弓の引き弓では、弓が次第に弓先に近づいて行くなかで、音の勢いを保つには背中、腰、股の部分で相応の調整が必要であり、身体の重心を次第に右尻と右の肩まで移動させ、弓の力を持続させるようにしなければならない。

 要するに、どのような動きを行うにしても、力の伝搬は「腰から発し、腕で伝え、指に達する」ことを根本としている。
 イメージ的に言えば人の動作は、人体は生命豊かな大木のようであり、つまり足は根、胴体は幹、両腕は枝であり、手と指は葉である。
 人の両腕と胴体の関係は枝葉と幹の関係に例える事ができる。「腰は幹の様で、手足は枝のようであり、腰が小さく動くと手足が自動的に動き、腰が動かなければ手足の動きはしっかりせず、むだな動きになる」。

 さらに分かり易く言えば、両腕と胴体の関係は、でんでん太鼓のようでもあり、柄(胴体)を左右に回転させると、ひも(両腕)が太鼓のばち(両手)を自然に回転させ、その勢いと力で太鼓の面(弓と弦)をはじくのである。太鼓の柄の回転が速いほど、ばちが太鼓をはじくのがはやくなり、音がより軽快になる。

 もちろん、二胡の演奏では、表面的には弓は弦に対し直線的な押す/引く運動だけで、でんでん太鼓とは異なる。しかし内在する関節と経絡は依然として基の幹と枝、太鼓の柄とばちの働きの関係に沿った動きをするのである。

 上述の分析に従うと、一つの概念が明らかになる。つまり理想的な二胡演奏法は、両手、両腕、および胴体の関係をはっきりさせ、それに精通することである。二胡の演奏を教えるのに最適な方法は、出来るだけ早くこの関係を把握させ、身体の運動機能に内在する規律を根本的に把握させることによって、一つに通じれば、全てに通じるようにさせることである。

 半世紀余りの間、プロ、アマをとわず二胡は座った姿勢で教え、練習しており、これは慣れ親しんだ演奏姿勢である。
 しかし筆者が長年教えてきた経験の中で分かったことは、多くの練習者がかなり長い間二胡を練習しているのに、依然として二胡演奏での力の源と、二胡を弾く時の両手、肩、背中、腰、股に内在する関係が理解できないため、二胡演奏上、さまざまな問題をかかえたままになっている。
 例えば座る姿勢が適当でない、背中が緊張している、腰の動きがよくない、肩がこわばっている、ひじが回転しない、弓の運び、指の運びの動きが良くない等々。

 ほかにも、座っての演奏では動きに制約があるため、いくつかの技術的問題点が隠され易く、練習者は両手の動きの調和と力使いがスムーズでない原因になかなか気付き難い。結果的に教える方もより多くの時間と労力を費やすことになる。

 立式演奏では、上述の問題が明らかになり、解決し易くなる。立式演奏の練習(特に歩きながらの練習)では、全身が緊張しているかどうか、動きが調和しているかどうか、股がこわばって腰と背中の動きを制限しているかどうか(腰と股のこわばりは二胡演奏の動きをスムーズにする際に大禁物)が分かる。
(凡爺注;腰と股と分けているが、あらまし二胡レベルなら腰と一言にまとめてもよいか?)

 でんでん太鼓の概念を用いて身体を回転させ、できるだけ腰をリラックスさせて股を落ち着かせ、腰を動きやすくさせる。
 腰を水平方向に左右に回転させながら右腕で弓を押し引きした時、角度が増しているのが体得される。

 両肩がリラックスするかどうか、両腕の動きが伸びやかかどうか、また肩は沈み、肘は持ち上がっていないか。(肩が沈み、肘を落とすのは、演奏時に力がスムーズに伝わる為の大前提である。)

 立って練習することに比較的慣れれば、坐って演奏してもより自由自在となる。
立式演奏は目的ではなく、それは一種の練習の過程であり、一部の関節や筋肉のこわばりを直接取り除き、足から股まで、腰から背中まで、肩から腕まで、腕から指までの各関節の調和をより早く把握するためであり、特に 弓の力が弓の先にまで達しない場合に有効である。
また長い間蓄積された頑固な問題(悪い癖)については、経験豊かな先生の指導の下で練習するのが最適であり、立式演奏の独特な効果を利用すれば、演奏の要領をより早く、より正確に掌握することができる。

 立式演奏はまた、二胡の練習での一種の調整剤とすることができる。多くの練習者は長い年月座って練習し、マンネリも感じているため、たまには姿勢を変え、立って歩きながら練習すれば、体の機能の調整に役立つ。

 なお、立って二胡を弾けば、体の回転幅が大きくなり、両腕の活動スペースが大きくなるが、二胡を弾く姿勢を自由にしてよいわけではない。
 例えば、体の脊椎の各関節は常に縦にまっすぐであるようにする。右手の弓の動きは ほぼ平らでまっすぐにする。左手で二胡を持つ動きは一定の角度を保つ等である。つまり「様々な変化があっても本質は変えない」という原則を崩してはならない。
  抄訳問責は凡爺

 お疲れさまでした。なかなか奥が深そうな話ですね! 読めば読むほど岳老師の言わんとするところが、少しづつ分かってくるような気もします。
 あらまし二胡の皆さんも一度、立式二胡をお試しされたらいかがですか? 凡爺は? うんん・・・、気にはなるが、似合いそうにもないですね、ジイさんに!


 なんとこのブログも数年ぶりの更新。面目もありません。また忘れた頃の更新になるやもしれませんが、新たに開設した「あらまし二胡」のホームページ共々、気長によろしくお願いします。
                                              凡爺
 

この記事へのコメント

にこひめ
2011年11月15日 23:28
こんばんわ
あらまし二胡ブログおめでとうございます!!
立式二胡、いつか出来ればと思っていますが遠い先です

凡爺
2011年11月16日 18:55
にこひめさん、コメントありがとうございます!
立式二胡、試されたら感想をお聞かせください。
あらまし二胡、のんびりと続けて行きたいと思っています。
はなみづき
2011年11月16日 23:16
凡爺さん、以前のコメントで趣味のサークルとして活動して行きたいとありましたね、私も興味があり参加したいです、
実力は、、、ですが、大丈夫ですか?
凡爺
2011年11月17日 19:37
はなみづきさん、こんばんわ!せっかく、お声をかけてもらいながら言いにくいのですが、目下サークル活動には至っていません。 実はこの頃はもう年を口実に、サボっている始末です。
そんなことでもし、はなみづきさんがサークル活動をされるのでしたら、逆に何か協力できることでもあれば幸いです。
はなみづき
2011年11月18日 23:20
凡爺さん、こんばんわ。サークル活動は興味がありますが
一人ではなかなか実のあるものが出来ないと思っています。
凡爺さんが腰を上げて下される時を待っていますよ!!
弦のうた事務局
2013年03月01日 13:28
こんにちは、はじめまして。楽しく拝見させて頂きました。もしご迷惑でなければ、下記サイトからサークル情報をお寄せ頂けませんか?よろしくお願いいたします。
http://www.tsurunouta.com/link/全国の二胡サークル/

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