二胡と雑音

 (1) 雑音についての雑感

 帰国して半年が過ぎた。北京で初めて二胡を手にし、習い始めたのはもう2年以上も前になる。時の流れは速い。が、おじさんの二胡は遲々として進まない。
 中国では二胡も安く買えるし(感覚的に日本の三分の一、程度?)、授業料にいたっては五分の一以下であった。良い二胡も手に入れ、良い環境にいたのに、それに気がついたのは帰国後の始末!老師にも申し訳ない。

 今のところ、諸々の演奏テクニックやレパートリーよりも、先ず、雑音の少ないきれいな音を出せる様にしたい(持ち帰った二胡自体は上等で弾く人が弾けば実に妙なる音色がでている)。

 ポジション移動がなく、スローテンポな曲の中にも名曲は、いくらでもあり、きれいな音が出るようになれば、とりあえず二胡の旋律を堪能できる。「色の白いは七難かくす」と言うが、音がきれいなら音程、リズムの少々の狂いもカバーされてしまうのでは(おじさん的発想か)。  
 
 音については上級者と入門者が弾いているのを、はたから、よく見比べれば何かヒントが得られるかもしれない。どこから、どのようにして、あのような雑音が発生するのか・・・。雑音について思いを巡らしてみた。

 きれいな音と、弓を持つ右手のしなやかな動きとは、関係が深い。雑音とは弦が不規則に振動し、いくつかの音が混じって干渉しあった結果である。例えはあまり良くないが、絵の具の赤、青、緑・・などの単色が、それぞれドレミ・・などの単音とすれば、雑音とは、色が混ざり合って灰色になってしまった状態か・・・。

 弓で弦を擦れば振動(音)が発生するが、同時に弓の動かし方如何では弦の振動を殺す作用もある。そこで雑多な振動(雑音)も生まれる。

きれいな音とは、純度の高い振動であり、擦る圧力と速度のハーモニーから生み出されると思われる。滑らかな弓の移動の中で、一定振幅の振動を引き出し、保つような動きでなければならない。これが乱れればギギギーの音になる。また、力を抜けば、弓が上滑りして音にならない。と、まあこんな感覚で雑音を捉えているのですが・・・。

 上級者を見ていると、動きがしなやかであり且つ力強い。そして弓がまるで弦に、まとわりついているかに見える。一方、初心者と言えば、まるで油が切れた機械か、お年寄りのイナバウアーの如く、動きがカクカクして伸びがない。もしかしたら、バレリーナが二胡を始めたら上達が早いのでは!中国では太極拳の動きや呼吸は二胡にもいいと聞いたのを思い出しました。

 
 多分、上級者は、音に瞬時に反応して反射的に、腕や手首の動きを微妙に最適化し、圧力と速度をコントロールしているのでは。
 そして手の動き(エネルギー)を効率よく音に変えているので無駄がない。  
 おじさんの二胡が、すぐに疲れるのは、年のせいばかりでなく、一杯、余分なエネルギーを使っているからに違いない(手首や腕が硬いので余分な力がいるし、微調整がきかないetc)。

 体をリラックスさせ、右手の感覚と音色の微妙な関係を、神経を澄まして体に覚えさせるしかないように思えます。
 音の立ち上げと終わりの部分は力を抜き、ダウンボウ、アップボウの、しなやかな切り替え等々。惰性で弾いていれば、いつまで経っても体は覚えようとしないのかもしれない。

(2)雑音低減法
 
 もう一つ(他力本願的、雑音低減法として)、二胡に手を加えて改善する方法はどうか。駒の後ろの、弦と皮の間に挟むフェルトなどの音質調整材である。これを挟むと、音の響きは小さくなるが、同時に雑音がはっきりと減るので上級者も、これは使っている(大きなフェルトを使った方が良いみたいです。但し音はやや小さくなりますが)。これがないと敏感に響きすぎて、雑音まで拾ってしまうようです。フェルトの端をコマに接触させると、より効果が大きいようです。

 皮の響きすぎは、湿度にも関係する。人の皮膚のようにある程度水分(或いは油分)があった方が、しっとりした音になるとも言われている(気のせいか湿度が高い日の方が雑音が少ないように思えます)。何れにしても、自分の二胡にあった音質調整法をいろいろ工夫してみたい。
これと関連するのが駒です。(画像クリックで拡大されます)
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 諸般の事情で、音を小さく弾きたいときに用いられる、駒のかわりに鉛筆を挟む方法はよく知られています。この方法は弦の振動自体はあまり変わらないが、振動が共鳴胴に伝わり難いので弱音器として使われる。これなら普通に、或いは思い切って弾いても音はあまり大きくならない。ただ少し、くぐもった様な音にはなるが、雑音は出にくので、初心者は気持ち良くのびのびと弾けます。
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 なお、老師はあまりこれを勧めない。演奏者として二胡の性能を最大限、引き出すのには弱音器など邪魔で、見栄えも悪い。演奏会や野外で弾くときは、音の大きさも要求される。正論として、余分なものを付けずに、楽器になれるのが大事ですと。

 だが演奏会など無縁なおじさん達はどうか。家の小さな部屋で二胡の演奏を手軽に楽しみたい向きには、この方法(弱音器)も捨てがたい。そこで、鉛筆の長さや、切り込みなどを工夫して、より自分がきれいと思う音に近づけていく(自信がついてから弱音器を外したらいい)。 
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(洗濯挟の様な弱音器:音量は十分の一ぐらいになります。これなら、思う存分、練習できま
すね)
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初級者の方々は、多かれ少なかれ雑音に悩まされていると思われます。弾き込むのが最良の解決策でしょうが、中々・・・。藁にも(いや弱音器)すがる思いですね。

                             2006年、春

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